購入意向アンケートから売上を予測できる? 販売計画に使う条件
新講座の説明会で「受けたい」と答えた人が多かった。その割合から講師や会場を増やす前に、回答へ価格と開催日が含まれていたかを確かめたいところです。架空の研修会社を例に、反応から申込みまでを追い、意向別の購入率を使える条件と、取消不能な投資の判断を分けて考えます。
購入意向は無価値な数字ではない。しかし、「買いたい」と答えた割合を、そのまま買う人の割合にはできない。過去の意向と実購買の対応を確かめられ、今回の条件も近いなら予測の材料にする。新しい商品や販売条件なら、先に実際の負担を伴う選択を確かめる。 どちらを選ぶかを整理するのが本稿の目的だ。
この記事の目次
講座の好反応から、会場を増やしてよいか
同じ好反応でも、設備を増やすかは変わる
架空の研修会社が、新講座への購入意向を調べたとする。既存顧客に、いつもの価格帯、同じ申込方法、来月の開催日を示しており、過去にも同じ調査と申込みの対応を記録している。この条件なら、意向を開催枠の予測へ使う余地がある。過去の誤差も含めて、追加枠を考えられる。
条件を変え、全く新しい顧客へ、価格を示さず「学びたいですか」と尋ねたとする。その賛成率で講師を大幅に増やすのは早い。価格や日程を示した申込み段階へ進め、どこで離脱するかを確かめる方が、次の投資判断に役立つ。
さらに、価格を示した申込みは集まったが、容易に無料で取り消せる場合を考える。申込数は前進した証拠だが、最終的な受講と同じではない。取り消し条件と過去の実績を踏まえ、確定前にどれだけ固定費を増やすかを決める。
ここで選択を分けるのは、調査に好意的だった人の人数だけではない。実際の購買に近い条件で得た回答か、過去の対応を確認できるか、後から取り消せる選択かという違いである。
売れなかった理由を、商品の価値だけに戻さない
反応から申込みへ進まない場合、必要性がない可能性はある。しかし、予算が来期、契約書の確認が未了、移行の担当者がいないという別の障害もあり得る。どの段階で止まったかを分ければ、商品を変えるのか、販売条件を変えるのか、時期を待つのかが具体化する。
反対に、申込手続きだけを直せば売れると期待し続けるのも危険だ。条件を示しても選ばれず、代替手段で十分だと繰り返し確認されるなら、追加の説明より提案内容を見直す理由になる。反応を集めることを、採用されない事実の先送りに使わない。
購入の有無を記録するときには、対象者を取り違えない。説明会への参加者だけで計算した割合を、市場全体へ掛けると、接触できる人の違いを無視する。需要予測には、何人に届き、その中で誰が関心を持ち、どの条件で買うかという段階がある。
価格・時期・予算と、過去の対応をそろえる
調査で示した商品と、売り場の商品は同じか
「こんな機能があれば使いますか」という問いには、価格、導入作業、切替費用、利用開始日が含まれていないことがある。回答者は魅力的な部分を思い浮かべて賛成しても、有料で購入する判断まで終えていない。
法人サービスでは、使う人と予算を決める人が違う場合もある。利用担当者が必要だと思っていても、調達条件や既存契約、他部門の確認を通らなければ申込みにはならない。担当者の反応を否定するのではなく、どの段階の意思を尋ねた回答なのかを区別したい。
予測したい期間も具体化する。「いつか導入したい」と「今期に契約する」では、事業計画で使える情報が違う。価格と時期を示しても、予算が確定していなければ、その不確定さを残す。質問を細かくしたこと自体で、将来が確実になるわけではない。
意向を予測に使うなら、過去との対応を確かめる
以下は研究を踏まえた編集上の提案である。既存サービスの更新や似た商品の販売で、過去に同じ聞き方をしているなら、その後の実購買と対応させる。強い意向を示した人だけでなく、低い意向でも買った人、回答しなかった人の扱いを確認する。
ここで必要なのは、全社共通の「意向の何割が買う」という固定係数ではない。商品、価格、顧客層、販売経路、期間を揃えたとき、過去の対応を今回へ持ち込めるかという検討である。条件が大きく変わったなら、古い換算をそのまま使う理由は弱くなる。
予測を作った後は、後から実績に合うよう式を直すだけで終えない。予測時点で使った条件を保存し、新しい期間の実績と比べる。既に見た売上へ合うことと、まだ見ていない売上を予測できることを分けるためだ。
既存商品の場合は、意向を使わず過去の販売実績から作る予測も、比較の出発点として残したい。意向を加えた予測が複雑になっても、後の実績とのずれが小さくならなければ、供給量の決定に追加する価値はまだ確認できない。これは本稿の評価方法の提案であり、全ての商品で意向が不要になるという研究結果ではない。
比較する際は、同じ予測時点と対象期間に揃える。一方だけが後から分かった受注を含んでいれば、公平な比較にならない。意向調査を続けるかどうかも、反応が良かったからではなく、既存の情報に何を付け加えたかで決められる。
新商品で必要なのは、同じ質問をもっと多く配ることか
回答者を増やせば、回答のばらつきを小さくできる場合はある。しかし、価格を示していない質問や、関心の高い人だけを集めた調査という問題は、人数を増やしても自動的には消えない。精密に測った好意が、そのまま需要になるわけではない。
販売条件が新しいなら、価格と提供範囲を示したうえで、見積依頼、導入準備、有料試行など、次の選択へ進む人を確認する方法がある。どの段階を選ぶかは提供可能な状態に合わせる。まだ提供できないものを、完成しているように売って確かめる必要はない。
ただし、有料試行も万能ではない。安い試行価格にだけ反応した可能性があり、導入に積極的な顧客が集まりやすい。試行を買う人と、本料金で継続する人も同じではない。その段階で確かめた条件を超えて、本格展開の数量を断定しないようにする。
「買いたい」以外の回答も、販売数の分母へ戻す
仮に、同じ価格・同じ販売期間で、購入意向が高い100人のうち30人が買ったとする。その後も同じ条件なら30%を参考にできるが、それだけでは販売全体を数えられない。意向が低い150人のうち15人も買っていたなら、購入者は30+15=45人になる。ここでは非回答者はおらず、各人の回答と購買が対応しているという仮定を置く。
| 意向の区分 | 対象人数 | 購入者 | 区分内の購入率 |
|---|---|---|---|
| 高い | 100人 | 30人 | 30% |
| 低い | 150人 | 15人 | 10% |
| 全体 | 250人 | 45人 | 18% |
30%は意向が高い人の中での購入率、18%は全調査対象の購入率で、答えている問いが違う。250人全員へ30%を掛ければ75人となり、この仮定の実績45人を上回る。逆に意向が高い人からの30人だけを販売全体とすれば、残りの15人を落とす。分母を直すだけでも、同じ調査から作る供給計画は変わる。
Morwitzの研究レビューは、意向が販売を不完全に予測する関係を整理している。ここでの二層の計算は、その研究の効果量を借りたものではなく、本稿の分析である。意向区分ごとの購入率を次の期間へ持ち込む場合も、商品、価格、時期、販売経路が近いことを確かめる。非回答者がいれば、その層の購入を別に追い、分からない購入率をゼロとして埋めない。
意向から販売数へ移す係数を、同じ条件で読む
この30%を使って、次の意向者200人を60人へ換算するとしても、価格・経路・回答者が変われば、同じ係数を持ち込む根拠は弱い。先の二層の計算と同じく、意向の低かった人の購入も販売全体へ戻す。既存商品の過去対応と、新商品の実際の負担を伴う選択を分けて確かめたい。
購入意向が予測に役立つ範囲を研究で読む
意向が役立つ条件を、研究はどう分けているか
Morwitz、Steckel、Guptaの2007年の研究は、購入意向と実購買の相関が強くなる条件を検討している。既存商品は新商品より、短い予測期間は長い期間より、具体的なブランドや型を尋ねる場合は商品カテゴリー全体を尋ねる場合より、関連が強いという結果だった。原論文の要旨
これは、既存商品なら回答率をそのまま売上へ掛けてよいという意味ではない。相関が強いことと、予測値が実数に一致することは違う。意向の高い商品ほど売れやすくても、全商品の購入者数を過大に予測することはあり得る。
Morwitzの2014年の研究レビューも、購入意向は将来の販売と関連して予測に役立つ一方、その対応は不完全だと整理している。著者所属大学の研究紹介・要旨
したがって「アンケートは当てにならないから不要」と捨てる必要もない。調査結果がどの判断に向くかを分ける方が有用である。候補案の相対的な反応を見ることと、来月の販売数量を決めることでは、求める精度も追加で必要な情報も異なる。
予測の精度と、仕入れ・投資の判断を分ける
当たりやすい予測と、良い供給判断も同じではない
同じ人数を過大に見積もる場合と過小に見積もる場合でも、事業上の損失は違う。研修会社の例なら、売れない追加会場を取消不能で借りる費用と、定員不足で申込みを断る損失を分ける。平均誤差が小さい方法でも、取消不能な支出を大きく増やすなら、それだけで採用できない。
予測から一度に全枠を確定する案のほか、追加枠の予約期限を確認し、申込みの進み方を見て段階的に確保する案がある。後から増やせるなら、その余地自体が不確実性への対応になる。反対に、講師や会場の確保を先送りすると提供できないなら、未確定な需要を残しても、いつまでにどの費用を負担するか決める必要がある。
これは意向の回答を精密にするだけでは解けない判断だ。過去データで予測のずれを確かめたうえで、余る場合と不足する場合の費用、取消・追加できる時点を合わせる。価格と提供価値の採算設計は価格競争と顧客価値で扱い、本稿では販売数量の不確実性を供給の約束へ移す条件を考える。
調査の価値は、強い数字を出すことではない
購入意向が低ければ、どの案を外すかを考える材料になる。高ければ、次に何を確かめるかが見える。ただし、高い数字が出たことを事業化の許可証にせず、販売条件と実購買への距離を確認したい。
過去の意向と実績が対応し、今回も条件が近ければ、調査を予測の一材料として使う。対応が不明な新しい提案なら、実際の条件で選んでもらう段階へ進む。「買いたい」という声を信じるか疑うかではない。その声が、どの条件まで含んだ意思なのかを確かめてから、必要な供給能力へ変換するのである。