「体育会出身だから厳しくしてよい」を見直す――Z世代の育成で区別したい、高い要求・学習支援・威圧
「部活ではもっと厳しく言われていたので、大丈夫です」
若手からそう言われたとき、上司は何を受け取るだろうか。率直に改善点を伝えてほしいという希望か。それとも、怒鳴ったり、人前で責めたりしてよいという許可か。
この架空の場面には、若手のマネジメントで混同しやすい三つのことがある。厳しい環境を経験したこと、その指導に耐えられること、そして、その指導で成果が上がることだ。同じ意味ではない。
「Z世代には丁寧に説明する。ただし体育会出身なら昔ながらの指導でよい」という分け方は、分かりやすい。しかし、その二分類を裏づける証拠はあるのか。研究をたどると、世代や所属歴よりも、指導の中身を分ける必要が見えてくる。
この記事の目次
「一般的なZ世代」を、目の前の部下に当てはめられるか
若手の反応が以前と違うことはあり得る。ただし、その理由を生まれた年代だけに求めるのは難しい。
2023年の論考『Are generations a useful concept?』は、世代区分の科学的根拠を検討し、広い出生年の集団へ共通の性質を割り当てる説明に疑問を投げかけている。ある時点で若手と中堅を比べても、生まれた時代の影響と、年齢・経験の影響は混ざってしまう。[Costanza・Rudolph・Zacher、2023]
大規模なデータでも検討されている。113か国・584,217人の価値観調査を分析した研究では、年齢と調査時期を考慮すると、出生年が仕事の重要性を説明する力は小さかった。ただし、測っているのは主に仕事への態度であり、実際の働きぶりや、特定の指導への反応ではない。年齢・時期・出生年の分離も分析上の仮定を伴う。「世代差は一切ない」とまで広げるべき結果ではない。[Schröder、2024年掲載・2023年オンライン公開]
実務では、「Z世代は指示の理由を知りたがる」とまとめる前に、本人が何を知らないのかを確かめたい。顧客への影響を知らないのか。評価基準が見えないのか。仕事の経験が足りず、次の動きが分からないのか。それぞれ必要な説明は違う。
体育会出身という情報も同じだ。競技、指導者、本人の役割、そこで何を学んだかは一様ではない。本稿で確認した文献には、日本のZ世代社員を厳しい体育会経験の有無で分け、職場での指導効果を直接比較した証拠は見当たらなかった。以下は、職場とスポーツの研究を照らし合わせた検討である。
高い要求と、威圧は別の指導である
「厳しくするか、優しくするか」だけでは、何を変えるべきかが分からない。少なくとも次の三つを分けたい。
| 指導の要素 | 具体例 | 確かめること |
|---|---|---|
| 要求水準 | 納期、品質、責任を明確にする | 達成条件と必要な資源がそろっているか |
| 学習の支援 | 手順を示す、練習する、改善点を返す | 次に取る行動が分かるか |
| 威圧・人格攻撃 | 侮辱する、恥をかかせる、反論を封じる | 指導内容に不要な敵意が加わっていないか |
この表は研究尺度そのものではなく、現場で行動を分けるための整理である。納期を守るよう求めることと、「そんなこともできないのか」と人を評価することを、同じ厳しさとして扱わない。
スポーツの研究にも、この区別を考える材料がある。317人のチーム競技選手、平均年齢17.67歳を対象とした研究では、支援的な指導に支配的・威圧的な行動が組み合わさる型は、支援が高く支配が低い型より、自律的な動機づけや取り組みの程度が低かった。一方、要求的な行動との組み合わせでは、その不利な関連は同じ程度ではなかった。[Reyndersほか、2020]
ただし、対象はベルギー・フランデレン地方の16~23歳の選手であり、指導を無作為に割り当てた効果検証ではない。測ったのも動機づけや取り組みの程度で、競技成績そのものではない。研究の「要求的」という分類も、単に目標が高いことと同義ではない。「厳しく要求すれば伸びる」という証明に使うのは早い。
ここから得られる実務上の示唆は、支援と威圧が同じ指導者の中で共存し得るということだ。普段よく面倒を見ているという理由だけで、侮辱の不利益も相殺できると判断する根拠にはならない。
「厳しくされて伸びた」という話を、どう扱うか
本人の経験を否定する必要はない。ただし、何が役立ったのかは掘り下げたい。
競争相手がいたことか。毎日練習したことか。合格基準が明確だったことか。監督が細かく修正してくれたことか。叱責と同時に存在したこれらの要素を分けなければ、次の職場で再現すべきものが分からない。
また、厳しい環境で成果を出した人の話だけから、その指導の平均的な効果は判断できない。途中で離れた人や、別の指導ならもっと伸びた可能性が比較に入っていないからだ。これは体育会出身者の性格についての主張ではなく、経験談から因果関係を判断する際の問題である。
スポーツ・運動場面の131独立サンプル、計38,844人を統合したメタ分析では、指導者が選手の意思や見方を尊重する「自律性支援」は、良好な心理状態や自律的な動機づけと正に関連していた。競技の場でも、本人の意思を尊重する関わりは、勝負への真剣さと対立するとは限らない。もっとも、主に相関を統合した結果であり、日本の元運動部社員への効果を直接測ったものではない。[スポーツ場面の自律性支援のメタ分析]
本人に尋ねるなら、「厳しい指導は平気ですか」よりも、「上達につながった指摘は、具体的にどんな内容でしたか」の方が、次の仕事に使える情報になる。
「適度な威圧はプラス」という研究をどう読むか
反対方向の証拠も見ておこう。インドの社員と直属上司から、時点を分けてデータを集めた2022年の研究は、威圧的・敵対的な上司行動と業績の間に逆U字の関係を報告している。中程度のときに業績が高いという関係で、誠実性が高い人では見られ、低い人では有意でなかった。[Srikanth・Thakur・Dust、2022]
この結果が示したのは、特定の条件で見られた関連である。「威圧は常に業績を下げる」とも、「体育会出身者には多少の威圧が有効」とも結論できない。
そもそも逆U字の関係が、研究全体で確立しているわけではない。破壊的なリーダーシップと業績などの関係を統合した2019年掲載のメタ分析は、全体として関係はおおむね直線的であり、曲線的な関係の証拠は限定的と報告している。対象概念や分析条件が異なり、2022年の研究を直接再検証したものではないが、「中程度なら得をする」を一般則にすることには慎重さが必要だ。[Mackeyほか、2019年掲載・2018年オンライン公開]
この研究が測った誠実性という性格特性は、運動部の所属歴とは別の変数だ。威圧を実験的に加えた効果検証でもない。観察された関連を、文化や職務の異なる日本の若手へ適用するには、職場で起きていることを改めて確かめる必要がある。
さらに、一つの業績指標との関連は、健康、離職、周囲への影響まで含めた利益を意味しない。上司による業績評価と客観的な成果が一致するとは限らない点も、この研究領域のレビューで問題にされている。[Tepperほか、2017年レビュー]
したがって、条件付きの正の関連があることは認めながらも、それを人材育成の推奨策にするには証拠が足りない、と判断するのが妥当だろう。
変えるべきは、基準よりも支援の方法
職場の研究では、72研究・83独立サンプル、32,870人を統合したメタ分析が、上司による自律性支援と、自律的な動機づけ、仕事への満足、業績などとの正の関連を報告している。これは分析全体の規模で、業績との関連を分析した対象はその一部だ。大半は横断的な調査で、自己報告も多く、業績との関連は本人による評価の方が他の測定方法より大きかった。導入すれば必ず成果が上がるという因果効果までは確定していない。[Slempほか、2018]
自律性を支える関わりには、本人の見方を聞く、判断の理由を説明する、選択や提案の余地を設けることが含まれる。それを実務へ落とすなら、守る条件を明確にしたうえで、任せる範囲を決める方法が考えられる。
たとえば、顧客向け資料を作る仕事なら、納期、数値の正確さ、必要な論点は共通の基準にする。そのうえで、初めて担当する人には見本と途中確認を用意し、経験者には構成案から任せる。体育会経験の有無ではなく、その仕事で示した技能と判断力に応じて支援を変える。
次の表では、世代や経歴で性格を診断せず、本人に確認できた状態から支援を選ぶ。
| 本人に確認できた状態 | 試す関わり方 | 効果を見る点 |
|---|---|---|
| 基準や進め方が分からない | 完成例、手順、途中確認を用意する | 同じ不明点や手戻りが減ったか |
| 短く率直な指摘を望む | 行動と修正点を簡潔に伝える | 理解して次の行動へ移れたか |
| 経験があり、自分で方法を決めたい | 成果条件を合意し、方法を任せる | 品質・納期と判断の理由を説明できるか |
| 指示は守るが、懸念を出さない | 上司から「この案の弱点」を尋ねる | 問題が深刻になる前に相談できたか |
見本と途中確認を用意する
成果条件を合意し、構成案から任せる
本文の顧客向け資料の例を整理した実務上の提案。世代・部活動経験で振り分ける診断や、効果が保証された指導法ではありません。
「体育会だから打たれ強い」「Z世代だから傷つきやすい」という予測よりも、本人の希望と、実際の仕事で起きていることを照合して調整する。
叱った回数より、次に何が変わったかを見る
フィードバックも、伝えればよいわけではない。KlugerとDeNisiによるメタ分析は、607の効果量を統合し、平均では業績改善を示す一方、3分の1を超える介入で業績が低下したと報告している。これは「部下の3人に1人は叱ると悪化する」という意味ではない。対象も方法も異なる介入の結果であり、研究は注意が課題から自己へ向かうほど効果が弱まる可能性を論じている。[Kluger・DeNisi、1996]
たとえば、数値の確認漏れに対して「体育会出身なのに詰めが甘い」と言っても、修正する手順は増えない。伝えるなら、次のように仕事へ戻す。
今回の資料は、売上の集計期間とグラフの期間が一致していません。このままでは比較を誤ります。提出前に元データと期間を照合してください。まず一緒に1件確認し、次の資料では自分で確認した箇所を説明してください。
この作例では、何が基準を下回り、なぜ問題で、次にどう直すのかを伝えている。率直さを好む人には短く、経験が足りない人には実演を添える。人格を攻撃する必要はない。
改善しない場合も、要求を曖昧にする必要はない。期限と到達基準を示し、技能不足、時間不足、理解のずれを確認して、担当や支援を見直す。危険な行動をその場で止める短い指示と、日常的に相手を萎縮させる関わりも区別したい。
マネジメントの評価は、「叱っても辞めなかった」「素直に返事をした」で終わらせない。仕事の質、手戻り、早期の相談、自分で判断できる範囲がどう変わったかを見る。本人が「平気です」と言っても、成果や負担が悪化しているなら方法を変える。
Z世代か、体育会出身かという情報は、経験を聞く入口にはなる。しかし、指導方法を決める答えにはならない。上司が引き継ぐべきなのは、本人を育てた環境の厳しさそのものではなく、何が学習を助け、次の仕事でも再現できるのかという理解である。