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上司ごとに差し戻される仕事:事実の修正と、受入基準の対立を分ける

二人の上司が同じ作業用紙へ異なる修正を示している様子

営業に合わせて売上資料を直すと財務から戻され、財務に合わせると営業から戻される。そんな仮想の場面で、担当者は何を直せばよいのでしょうか。契約済みの受注と未契約の見込みを一つの合計へ求める例から、事実の修正、表示の工夫、上司側で決める用途の違いを見ていきます。

こうした場面で、部下への説明を詳しくするか、上司同士の調整へ戻すか。分岐になるのは、同じ事実と制約を共有すれば両方の受入条件を満たせるのか、それでも一方を選ぶ必要があるのかである。本稿は、部下へのフィードバックを返す前に、この違いを見分ける方法を提案する。

この記事の目次
  1. 一つの売上合計で、二つの用途を満たせるか
  2. 目標の対立を、伝え方の問題だけにしない
  3. 基準を変更できる人へ、残る選択を渡す

一つの売上合計で、二つの用途を満たせるか

説明用に、月次会議の資料を作る担当者を考える。定められた様式には、来月の営業部の売上を一つの合計で示す欄がある。営業の上司は人員の余力を確保するため、有力な見込み案件も含めたい。財務の上司は支出の判断に使うため、契約済み案件だけを載せたい。全員が同じ案件一覧を見ており、どの案件が未契約かにも争いはない。実在企業の事例ではない。

担当者が未契約の案件を取り落としていたなら、修正情報を返せばよい。しかし本例では、何を集計へ含めるかが対立している。一つの数字を両方の目的に使う条件のまま、案件一覧をさらに丁寧に説明しても解けない。どの用途を優先するか、数字を分けてよいかを決める必要がある。

案は、契約済みの受注と未契約の見込みを別の欄に示すこと。様式を維持し、契約済みだけを合計して、余力の計画は別資料で行うこと。あるいは、見込みを含めた計画値を載せ、支出の決裁にはその数字を流用しないことである。契約が取れたと仮定して見込みを確定扱いにする案は、事実を変えてしまうため採らない。

この仮定では、契約済みの受注と未契約の見込みを分け、数字の用途をそれぞれ明示する案を選びたい。人員の計画と取り消しにくい支出を、同じ確実さの数字で決める必要はないからだ。様式を変更できる責任者が、各数字の意味と利用先を合意する。担当者が見込み案件の扱いを一人で変えることとは違う。

条件を変え、その会議の目的が取り消せない支出の決裁に限定され、契約済み受注だけを入力とするルールが合意されているなら、契約済みだけを載せる案へ変わる。営業の余力確保は、同じ欄を膨らませず別の計画へ渡す。逆に、会議が可逆的な人員調整だけを扱い、見込みが外れたときの戻し方も決まっていれば、見込みを含む計画値を使う理由がある。見込みを確定と表示しない条件は、どちらでも必要になる。

さらに、すべての対象案件が契約済みになれば、二人の集計は一致し、対立は消える。一方の条件を常に正しいと固定せず、用途と契約状況から選び直す。これらは仕事の進め方の提案であり、紹介した研究から導かれる改善率ではない。

二人の上司の受入条件を同じ事実と制約で比較する。両立するなら担当者が修正する。両立しないなら基準を決める権限者が用途・集計対象・表示方法を選び、合意条件を担当者へ返す分岐図
概念図:事実の修正で解ける食い違いと、受入条件の選択が必要な対立を分けます。編集上の提案であり、実測の効果や発生確率を表す図ではありません。

事実を直すか、表示を工夫するか、用途を決め直すか

まず、上司ごとに「何があれば受け入れるか」を具体化する。「説明が弱い」「慎重過ぎる」のままでは比較できない。集計の対象、数字の用途、提出期限、承認に必要な証拠を挙げ、同じ版の資料に照らす。以下は本稿の編集上の整理であり、研究で効果が確定した診断手順ではない。

営業は契約済みだと思い、財務は未契約だと知っていたなら、違うのは目標より事実である。どの案件について、どの契約を、いつ確認したかを照合する。契約が確認できれば、財務も集計へ含められるかもしれない。未契約なら、営業が見ていた前提を直す。担当者の説明力を評価する前に、判断材料を共有する必要がある。

情報は同じでも、表現の方法が違う場合もある。営業は読みやすさを求め、財務は集計の対象を省かないことを求める。要点を本文へ、詳細を別紙へ置く案を双方が受け入れるなら、要求は両立する。担当者に構成を工夫する余地を返せる。上司の好きな書式が異なるだけなのに、経営判断として大げさに扱う必要はない。

目標の対立を、伝え方の問題だけにしない

Lockeらの1994年の原論文の抄録は、異なる二つの研究を報告している。一つは学生チームへ量と質の対立する目標を割り当てた実験、もう一つは大学教員の教育と研究の葛藤を調べた相関研究である。どちらでも葛藤は少なくとも一つの成果指標と負に関係していた。

同じ負の関係でも、研究の読み方は違う。学生の実験は限られた課題と割当条件を、教員の研究は仕事の中で観測した関連を扱う。後者から、葛藤を除けば成果が必ず上がるとは言えない。確認した範囲は抄録であり、個別の効果量や介入の詳細は採用しない。日本の会社で上司を集める会議が有効だと検証した研究でもない。

フィードバックの研究も、言い方だけに原因を求めることへ留保を与える。KlugerとDeNisiの1998年の著者論文は、目標や基準との差を認識することと、注意が仕事から本人自身へ移ることを区別している。褒める情報でも厳しい批判でも、どこへ注意を向けるかによって仕事への働きが変わり得るという理論的整理である。衝突する受入条件を一本化する効果を直接測ったものではない。

技能や手順が足りない部下への支援は、若手の指導を扱う記事で詳しく扱っている。ここで検討するのは、担当者が両方の指摘を理解していても、成果物を受け入れる側の条件が食い違うケースである。何を修正すれば合格なのかを確定したい。

基準を変更できる人へ、残る選択を渡す

二人の上司が同じ資料を見ても、最終判断をできるとは限らない。営業の責任者に見込みの算定を決める権限があっても、全社の会議様式や支出条件を変える権限は別の責任者にあるかもしれない。担当者の直属上司だからという理由だけで、他部署が使う数字の意味まで決められるとは扱わない。

英国の安全衛生当局HSEの役割に関するManagement Standardsは、組織が従業員へ求める異なる要求をできる限り両立させること、役割の不確実さや葛藤を申し出られる仕組みを求めている。職場ストレスを扱う英国の指針であり、日本企業の個別案件の決裁者を指定するものでも、特定の調整方式の業績効果を示す実験でもない。

この方向を実務へ落とすなら、相談を受け取る人に加え、数字の用途や様式を変更できる人を特定する。冒頭の売上資料なら、営業と財務が使う月次資料を所管する責任者、またはその範囲の判断を正式に任された人へ、残る選択を渡す。調整役は事実と各案の影響をそろえ、決定権者は何を守り何を変更するかを引き受ける。共同決裁が必要な組織では、その合意を取る責任と回答期限も決める。

担当者には、確認状況を集める、両立する構成を提案する、既に認められた範囲の修正を進める裁量を残す。一方、数字の定義、他部署が使う判断材料、正式な合格条件を変える判断は、権限を確認してから行う。返事を待つ間も確認済みの事実を整理できるが、黙って片方の集計条件を捨てて正式な会議へ出すことまで主体性として求めない。権限委譲の通常の範囲と例外については、別の記事へつなげる。

合意後の差し戻しを、本人の失敗と混ぜない

決定を「今回は財務を優先」とだけ残すと、次回は同じ対立へ戻る。対象、採用した条件、変更した条件、判断者を短く残し、両方の上司がその条件で成果物を確認する。例では、契約済みの合計と見込みを含む計画値の定義、どの判断に使うかを共有する。

新しい事実が判明して合意を変えることはある。その場合は、何が変わったため再判断するのかを示す。合意どおり作った資料を、後から別の条件で戻した回数を、部下の品質不良へ一括して数えない。基準が安定した後の確認漏れと、基準変更に伴う作り直しを分ければ、次に必要な対策を見誤りにくくなる。

運用の確認では、面談や調整会議の回数より、対立を誰が引き取り、合意した条件で仕事が受け入れられたかを見る。同じ案件での往復が減っても、別資料の作り直しや、支出決裁での誤解が増えれば、その条件は見直す必要がある。これは提案を検証する観点であり、前後の件数差だけで調整の因果効果を確定するものではない。

同じ事実と制約の下で受入条件が両立するなら、担当者へ具体的な修正を返す。両立しないなら、条件を変更できる責任者へ選択を戻す。 部下に両方の指摘を覚えさせることと、両方を満たせる仕事を設計することを混ぜない。その区別が、フィードバックを続けるべき場面と、上司側が決めるべき場面を分ける。

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