技術提携が事業につながらない:連携先を増やすか、深めるか
展示会では面白い技術に出会う。大学との面談も、スタートアップの紹介も増えている。それなのに、翌年度の事業計画に入るものがない。そこで「接点が足りない」と考え、さらに外部との連携件数を増やす。この追加投資は、本当に詰まっている場所へ向かっているだろうか。
外の知識を探すことと、見つけた知識を評価して事業へ組み込むことは違う。探索先を狭め過ぎれば未知の可能性を逃すが、候補を増やしても評価が進まなければ意思決定は変わらない。解きたい問題の見立てが足りないときは異なる知識へ広げ、候補の実力が分からないときは検証を深める。本稿は、次の探索予算をどちらへ配分するかを考える。
この記事の目次
「外部連携は多いほどよい」を支持しない研究
LaursenとSalterの2006年の論文は、2001年に実施された英国のイノベーション調査を用い、製造業2,707社を分析した。外部知識の探索の広さ・深さと、新しい製品などから得る売上の関係を調べ、探索を増やすほど便益が続くとは限らない逆U字の関係を報告している。Laursen・Salterの原論文
ここで広さとは利用する外部情報源の種類、深さとは重要な情報源として使う種類を指す。業務提携した企業の社数をそのまま数えた指標ではない。また、利益を測った研究でも、企業を無作為に振り分けて連携先を増やした実験でもない。「提携が何社を超えると儲からなくなる」という数字には読み替えられない。
この区別は実務でも効く。同じような販売会社を何社追加しても、得られる知識の種類が増えるとは限らない。逆に、取引先一社との対話でも、営業窓口だけでなく現場の利用者や保守担当から学ぶことで、問題の見方が変わる可能性がある。件数の増加と探索の広がりを同一視しない方がよい。
広げ過ぎが必ず悪い、という結論にもできない
Chenらの2011年の研究は、中国企業の調査で、外部探索の範囲・深さとイノベーションを分析した。科学技術を重視する型と、実践や利用者との相互作用を重視する型を区別すると、探索を増やした際の収穫逓減は一律には現れなかった。著者所属大学が公開する論文情報・要旨
英国製造業の結果と、中国企業の結果では、国、企業の知識獲得の仕方、用いる変数や分析条件が同じではない。今回確認できた後者の資料は要旨であり、細かな標本構成まで根拠にした業種別の推奨はできない。どちらも、現在の日本企業に最適な接点数を教えるものではない。
したがって「これ以上広げない」という一律の上限も、「開放的な企業ほど伸びる」という標語も、ここからは導けない。研究が促すのは、探索量だけで成果を説明せず、どんな知識を、どのように使っているかを分けて見ることである。
増やす前に、まだ答えがない問いを書く
以下は研究結果そのものではなく、探索投資の配分に関する編集上の提案だ。まず候補一覧を並べる前に、事業上の未解決の問いを一文にする。「生成AIの活用先を探す」では広すぎる。「検査工程の不良を、設備を止めずに早く見つけられるか」なら、必要な知識と試す条件が少し明確になる。
次に、分かっていないことを二つに分ける。問題の原因や解き方そのものが分からないのか、それとも有力な解き方はあるが、この現場で成立するかが分からないのか。前者なら異なる専門分野や利用者へ接点を広げる意味がある。後者なら、追加面談より試験条件や受入基準を整える方が、次の判断に近づく。
ここでいう深めるとは、同じ会社と長時間話し続けることではない。実データの特徴を確認する、既存設備との接続を試す、運用担当が異常時の対応を確認するなど、採用判断を変える情報を得ることだ。候補を一社に固定する必要もなく、共通の条件で複数案を比べる検証も含む。
この問いに対して、検出モデルは試せても再検査の運用が決まらない場合があります。同種モデルの提供者との面談を増やしても、そこは埋まりません。失敗例、費用、実装条件の何が具体化したかを追い、研究の関連を個別提携の成功率へ換算しないようにします。
工場の不良検知なら、同じ面談でも価値は変わる
架空の製造会社が、不良検知を改善したいとする。担当者は画像認識の会社を何社も訪問したが、現場では不良が起きる前兆が画像に写るのかさえ分かっていない。この状態で似た製品の説明を追加で聞いても、解決可能性はなかなか定まらない。
ここでは、材料、設備、作業条件を知る人へ探索を広げる案が有力になる。温度変化が先に現れるのか、作業記録に兆候があるのかによって、必要な技術が変わるからだ。外部の接点は増えても、目的は技術の品揃えではなく、問題の解き方の候補を変えることである。
条件を変え、不良の特徴が画像で捉えられ、候補技術も見つかったとする。ただし、現場の照明や品種変更で誤検知が増えるかは未確認だ。この段階では、さらに別の販売窓口を増やすより、候補を同じ条件で試し、誤検知時の作業まで確認する方が採用判断に結び付きやすい。
もう一度条件を変える。検証の結果、重要な不良がそもそも撮影できないと判明したなら、深掘りを続けるだけでは行き詰まる。前提が崩れたので、別の測定原理や工程そのものへ探索を広げ直す。広げる工程と深める工程は、一方向に終わる段階ではなく、得られた事実によって行き来する。
社内に受け手がいないとき、連携契約は解決にならない
外部から説明を受けても、自社の誰が技術の適否を判断するか決まっていないことがある。試験用データの提供者も、導入後の保守担当も不明なまま、提携の発表だけが先行する。こうした場合、外部企業の質とは別に、検証を前へ進める社内の仕事が欠けている。
次の予算を面談や契約へ使う前に、少なくとも評価を担う人と、評価後に何を決めるかを置きたい。全ての専門技術を内製する必要はない。外部の評価支援を利用してもよいが、最終的に自社の業務に合うかを判断する責任まで曖昧にしない。
ただし、これは「社内能力を整えるまで外部と話すな」という順番ではない。何を学ぶ必要があるか自体が分からないときは、外部との対話が能力形成の入口になる。問題は、学ぶための接点なのか、採用を決めるための検証なのかを混ぜ、どちらも進んでいない状態を連携実績として数えることだ。
同じ相手との対話でも、広さと深さは混在する
探索先を広げる日と深める日を、部署ごとに完全に分断する必要はない。一つの試験から別の課題が見つかり、新しい専門家へ相談することもある。反対に、初対面の相手が決定的な評価データを持っている場合もある。契約の新旧ではなく、その活動によって何を知ろうとしているかで予算の役割を説明したい。
例えば次回の面談に進む前に、「この情報が得られれば試験へ進む」「この制約が解けなければ候補から外す」と書く。相手との関係を切るための条件ではなく、判断を先送りし続けないための条件である。採用できない理由が分かった後も、同じ質問のために接点だけ増やしていないかを見直せる。
探索の成果を、面談件数以外で報告する
探索担当の報告には、接点の数に加え、「どの仮説が残り、どの案を外したか」を置くとよい。新たな情報源が問題の見方を変えたのか、既存候補の検証が導入判断を進めたのかを分ける。採用しないと決めたことも、十分な根拠があれば次の支出を避ける成果になる。
一方、すぐに製品売上へ結び付かない探索を全て無駄とすると、まだ用途が定まらない知識に触れる余地を失う。探索活動の役割を、近い採用判断と、将来の選択肢を作る学習に分け、それぞれ何が分かれば続けるかを明らかにしたい。同じ短期売上目標で両方を評価する必要はない。
次の一件を増やす理由が「まだ不安だから」だけなら、一度止めて、その不安を問いに直す。異なる解き方が必要なら探索先を変える。候補の実力が分からないなら検証へ資源を寄せる。外部とのつながりを増やすことは目的ではない。選べなかった案を選べるようにするために、次に必要な知識へ投資するのである。