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問い合わせを短い順に処理すると、先に受けた長い一件はいつ終わるか

受付順に並ぶ問い合わせカードと厚い調査ファイル、その横に置かれた時計

朝の処理を始める時点で、問い合わせが三件残っています。先に受けたAは調査から回答まで20分、後のBとCはそれぞれ2分で回答できるとします。担当者は一人です。短い二件を先に片付ければ、完了した連絡がすぐ二つ増える。では、最初に受けたAの顧客には、いつ回答が届くでしょうか。

これは、処理順を比べるための仮想例です。三件とも必要な資料がそろって着手でき、所要時間も分かっている。途中の割り込み、段取り替え、手戻り、他の人への確認はなく、一件ずつ最後まで処理すると置きます。まず、この単純な条件でも何が変わるかを見ます。

この記事の目次
  1. 同じ24分の仕事で、平均は22分から10分へ変わる
  2. Aを24分後まで待たせてよいかは、別に決める
  3. 後から短い依頼が届くと、同じ計算ではなくなる
  4. 短い一件を選ぶとき、Aを次に進める枠も残す

同じ24分の仕事で、平均は22分から10分へ変わる

処理開始を0分とし、受付順にA、B、Cを処理すると、Aは20分後、Bは22分後、Cは24分後に終わります。開始時点から完了までの時間の平均は、(20+22+24)÷3=22分です。受付後、開始時点までに既に待った時間は、ここには含めていません。

短い順にB、C、Aへ並べ替えると、Bは2分後、Cは4分後、Aは24分後に終わります。平均は(2+4+24)÷3=10分です。どちらも実作業は計24分、最後の一件が終わる時刻も24分後で変わりません。

平均が12分縮んだのは、担当者の作業が速くなったからではありません。二件の完了を前へ動かし、その代わりAの開始を4分、完了も4分遅らせたからです。 処理件数や平均だけを見ていると、この負担の移動が見えにくくなります。

仮定の3件を受付順A20分、B2分、C2分で処理すると完了は20、22、24分で平均22分。短い順B、C、Aでは2、4、24分で平均10分だが、Aの完了は4分遅れる。B、A、Cなら2、22、24分で平均16分となり、仮のAの期限22分に間に合う。全件の終了はいずれも24分。
図:仮定の仕事を同じ時間軸で並べた計算例です。実測の改善率ではなく、開始時点から先の完了時間を比べています。

順番だけで平均が変わる理由は、長い仕事を先に置くと、その後ろにある全件が長い時間を待つためです。短い仕事を前へ出せば、長い仕事の完了を少し遅らせて、短い仕事の大きな待ちを減らせます。この例ではB、Cがそれぞれ20分早まり、Aは4分遅くなりました。

米国MITの2015年の講義資料は、一つのコンピュータで既知の処理時間を持つ仕事を並べる問題について、短い処理時間の順にすると平均完了時間が最小になることを説明しています。長い仕事が短い仕事より前にあれば、順番を入れ替えるという証明です。MITの講義資料・1頁

ただし、これは処理時間が既知で、全件が着手できる状態にあり、一つの処理資源で同じ重みの完了時間を比べる数理的な問題です。日本の問い合わせ窓口で、短い順を導入すれば平均が何割縮むと測った実験ではありません。締切や案件間の依存、順序によって変わる準備時間を無視してよいという規則でもありません。

Aを24分後まで待たせてよいかは、別に決める

Aの顧客が結果を必要とする時刻を、処理開始から22分後と仮定してみます。この場合、受付順のAは20分後に終わるので間に合いますが、短い順のAは24分後となり間に合いません。22分はこの例だけの業務上の約束で、研究が推奨した待ち時間の基準ではありません。

短い順が平均を最小にしていても、期限を守るという別の目的には合わないことがあります。反対に、Aは24分後でも用途に間に合い、BとCを早く返す価値があるなら、三件の中で短い順を選ぶ理由があります。判断の違いは「効率を重視するか」という姿勢ではなく、Aを遅らせられる範囲があるかです。

ただし、Aに期限があるからといって、全面的に受付順へ戻す必要もありません。同じ仮定でB、A、Cと処理すれば、Bは2分後、Aは22分後、Cは24分後に終わり、平均は16分です。この仮定なら、Aは22−20=2分後までに着手する必要があります。短い二件を両方先にする案をやめ、一件だけ先に返すと、Aの期限を守りながら受付順より平均を縮められます。ただしAには時間の余裕が残りません。20分という見込みが不確かなら、この計算だけで期限を守れるとは約束できません。

ここからの編集上の提案は、影響の大きい障害や期限付きの依頼を、通常案件の短さだけの順位で扱わないことです。まず誰にいつ結果が必要かを確かめ、その約束を満たす順番の中で平均を短くする余地を探します。平均最小の定理を、全ての顧客へ同じ速さを保証する定理として使いません。

後から短い依頼が届くと、同じ計算ではなくなる

三件だけなら、最後は24分後に全件終わりました。ところがBとCを処理している間にも短い照会が届き、そのたびにAより前へ入れる運用なら、Aの開始予定は後ろへ動き続けます。有限の三件を一度並べ替えた結果から、継続して依頼が来る窓口の待ち時間は約束できません。ここから直ちに「Aは永久に終わらない」とも言えません。到着の続き方と、使える処理時間が別に必要です。

MITの同じ資料は、仕事が途中で追加される場合、今の仕事の残り時間より短い仕事が来たら切り替える方式も説明しています。こちらは、最初に見積もった総時間の短い順で一件ずつ終える方式とは異なり、残り時間に基づいて中断・再開する方式です。研究でSRPTと呼ばれるのは後者です。

人が行う調査では、作業時間が事前に確定するとは限りません。2分と思った照会に追加調査が必要と分かることもあります。中断の後に資料を読み直したり、別の人へ説明し直したりする時間もかかります。最初の見積もりが短い案件を先にする運用を、正確な残り時間が分かり、損失なく切り替えられる数理モデルと同じ「最適な方法」とは呼べません。

短い順への留保から、長い仕事は必ず損をするという結論に進むのも早計です。米国Carnegie Mellon大学のBansalとHarchol-Balterによる2001年の研究は、SRPTと、全件へ処理能力を分けるPSを比較しています。単一サーバーへ一定の確率過程で仕事が来るモデルで、負荷が低い条件では、長い仕事を含む長さ別の期待応答時間もSRPTの方が短くなり得ます。一方で、負荷や仕事の大きさの分布によって、大きい仕事がPSより不利になる条件も扱っています。著者公開論文・5節

この比較相手は先着順ではなく、同時に処理能力を分けるPSです。応答時間も最初の受付メールまでではなく、到着から完了までを指します。計算機の数理分析を、人間の窓口で全員が速くなるという実績へ読み替えず、どの方式と何の時間を比べた結果なのかを残す必要があります。

短い一件を選ぶとき、Aを次に進める枠も残す

実務では、同じ重要度で、処理時間を見分けやすく、順番を替えても約束を破らない通常照会を、短い順の適用候補にします。長い調査案件を同じ列に置くなら、次に着手する担当者と時間を確保し、後から来た短い依頼を何件でも差し込める状態を避けます。これは本稿の編集提案で、研究から一律の時間配分や件数上限を作ったものではありません。

見積もりが外れたときは、短い案件として選んだ事実に引きずられず、追加で必要になった調査と次の着手を決め直します。一次回答だけ送って完了へ移し、調査待ちの本体を集計から落とさないことも必要です。初回応答を速くしたことと、用件を解決したことを別に数えます。

短い仕事の完了数だけで担当者を評価すると、長い仕事を引き受けるほど不利に見える場合があります。実務の時間は、朝の共通時点からだけでなく、各案件の受付から解決までを追います。完了済みの平均に加え、受け付けたまま残る案件の経過時間と、予定した着手を何回動かしたかも残します。これらは公平性の万能な指標ではありませんが、完了した案件だけの平均から消えてしまうAを見つける材料になります。

ここで扱ったのは、同じ問い合わせの処理順です。まとめて処理する件数と段取りの費用は一括処理と一件流し、到着の集中や設備の混雑は平均負荷と待ち時間で扱っています。これらの対策と同時に方式を変えれば、前後の差を処理順だけの効果にはできません。

朝の受付一覧へ戻ると、BとCを先に返す案は、Aの回答を4分遅らせる案でもありました。Aの期限があるなら、先に返せる短い件数をその余地の中へ収めます。受付一覧では、次に終える短い一件と一緒に、Aをいつ誰が進めるかも決める。平均を縮めることと、古い一件を終わらせることを、同じ処理順のルールに含めます。

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